ローンの保証人契約と相続

ローンの保証人が、亡くなった父親。債務者本人が死去したら?

15年前の保証契約は…?

相談者、サチコさん(30代)は、15年前にお父様を亡くし、お母さんと二人暮らし。一人娘で兄弟はありません。

自宅は、亡くなったお父様が建てたもので、住宅ローンは、亡くなったときの生命保険で完済して「借金は全部片付いたわ」と、安心して暮らしていました。

ところが!お父様の弟さんである叔父さんが亡くなって数日後、銀行が、お母様とサチコさんを訪ねてきました。

「サチコさんのお父様が、15年前、叔父さんのローンの保証人になっていました。亡くなる前から、叔父さんは滞納をなさっていまして、奥様と、サチコさんに返済をしていただきたいのですが。」
「えっ!?でも、叔父さんには子供さんがいて、家に住んでいますよね?借金を返すのは、その、従兄弟たちなんじゃないですか?」
「おっしゃる通り、お子さんたちはいらっしゃいますが、一人は相続放棄をなさいまして、もうお一人は、限定承認をなさいました。」

限定承認、というのは、相続財産に、財産と借金の両方をバランスして、払いきれない分の借金は免除してもらう、という手続きのことです。相続放棄、というのは文字通り、一切ノータッチで相続に関わらないこと。

「それで、当銀行も一部は返済をしていただき、まだ、不足があるので、お支払いをお願いに伺ったというわけでして。」

サチコさんも、お母さんもビックリです。借金はキレイになっていると思っていたし、亡くなったお父さんが叔父さんの保証人になっていたことは知っていたものの、その借金は当然、家を相続した子供たちが払うものと思っていたのですから。

困った、サチコさんと、お母さんは、法律事務所へ相談に行くことに。

連帯保証人という立場は、「相続の対象」?

「…というわけで、どうして、私たちが、叔父さんの相続に関係ないのに、叔父さんの借金を払わなければならないのでしょうか?」
「う~ん。これは、叔父さんの相続じゃなくて、お父さんの相続が問題ですね。」
「えっ?どういうことですか?」
「お父さんは、生前、保証人をなさっていたので、その立場は「保証債務」というマイナスの財産として相続の対象になるんですよ。」
「でも、私も母も、保証人になる約束なんかしていないのに…」
「しかし、お父さんが亡くなったとき、生命保険で家のローンを清算なさっていますね?それから、家の名義も。」
「はい。母と、私の共有ですけど。」
「そのことで、お二人は、単純承認をしたとみなされてしまったんですよ。これは、マイナスも、プラスも両方の財産をそのまま相続します、という意味です。だから、お父さんの保証人の立場はお二人にバトンタッチされてしまっているんですね。法律上は、払う責任は生じてしまいます。」
「ええっ!?そんな…!」

二人は二度びっくり!

なんと、15年前に終わったと思っていたお父さんの相続が、実は思わぬ落とし穴だったのです。

サチコさんたちは、弁護士を交渉人に依頼して、銀行と交渉してもらいました。「代わりの保証人を立てていただければ。」という条件に今度は、叔父さんの子供である従兄弟や、叔母と相談。結局、払いが遅れていた分は、従兄弟が工面し、叔母の兄弟と従兄弟の一人が、保証人になることで決着しました。

保証人契約は、相続されるということを知らなかったばかりに大変なことになるところでした。目に見えない権利の相続にも気をつけなくてはなりませんね。

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