専業主婦は銀行でカードローンが使える

まさかのDV!専業主婦の非難を助けた銀行カードローンとは!?

同居が引き金で夫がDV男に。

「もし、カードを手元に残していなかったら、と思うとぞっとしますね。銀行ローンが使えたから、逃げられたようなものです。とにかく、地獄のような日々で…こんなだと分かっていたなら、絶対結婚しませんでした。今も、子供には、「パパは死んだ」と言い聞かせています。幸い、父親をあまり覚えていないみたいで…。」

そう語るのは、マサエさん(30歳)。袖口をまくって見せてくれた手首は、わずかに変形が残る。夫の暴力で骨折したときの痕跡だという。2年過ぎた今でも、季節の変わり目には鈍い痛みが続く。

職場で知り合った3歳上の夫と恋愛結婚。まもなく、妊娠、幸せな結婚生活を送っていた。ところが、子供が生まれた直後、義父が急死。残された義母と同居するようになってから、優しかった夫の態度が次第におかしくなっていった、という。

「夫は、義母の言いなり。少しでも反対すると、激しい言葉で私を叱り飛ばし、義母に謝れ、と。理由なんて、味付けが濃いか薄いか、とか、今夜のおかずが、義母の好きなものじゃなかった、とか。もう、本当につまらないこと。子供が泣くのがうるさい、まで、すべて私のせいでした。そのうち、「赤ちゃんがいて大変だろうし、買い物は、私がするから。」と、財布も握られてしまいました。」

自分名義で持っていた携帯も、無断で解約され、電話をかければ、通話記録をチェックされる。常に監視されているような状況に耐えられなくなり、ママ友とお茶を飲みに行った。

「帰宅したら、夫が鬼のような形相で、「どこへ行ってたんだ!」って怒鳴るんですね。ちゃんと、事前に話もしたし、義母も了解済みだったのに、話も聞かないで、帰宅が遅かった、義母を一人にして!と、義母の前で殴る、蹴るの暴力を振るわれました。おもわず、「お義母さん、助けて!」っていったんですけど…」

目の前で暴力を振るわれているのを、無表情に見つめている義母の顔を見て、ゾッとした、という。骨折はこの時。医者には「転んだ」といった。

「それからは、なにか、押さえていたものが外れた、っていうか?定期的に暴力を振るわれていましたね。でも、いつ、急変するか分からない状況に、ビクビクしていたし、それ以来、人とも会うチャンスがなくなっていったせいで、私も判断力をなくしていました。」

独身時代から持っていた通帳も印鑑と一緒に取り上げられ、自由に使える現金もない。実家に電話をするのも監視つきで、「一生逃がさない」という夫の言葉をうのみにしていた。

検診で発覚した暴力。脱出のために選んだのは…

夫のDVが発覚したのは、乳児健診。マサエさんの様子を見て、保健師が「内緒で相談したいことがあるなら、個室がありますよ。」と声をかけてくれたおかげだった、という。泣きながら、事態を打ち明ける彼女に保健師は、公的なシェルターの存在や、DVが犯罪であること、避難を助ける制度について説明してくれた。

「暴力を振るっている方がおかしい、って言われて、急に目の前が開けた感じでした。それまで、「何かがおかしい」と思いながら、暴力と、言葉で押さえつけられて、判断ができてませんでしたから。」

同じころ、子供にも、義母が手を上げるようになっていった。

「ものさしとか、長いものでお尻を叩くんです。義母は躾だっていうけど、みみずばれになってたこともあって。ここにいたら、子供もおかしくなる、と思って夜中に子供をおぶって、何度か歩いて逃げようとしました。でも、すぐ見つかってしまって。」

交通の不便な場所は、タクシー代がないと遠くまで逃げられない。外出の隙に、消費者金融にも聞いてみたが、専業主婦の彼女には夫の許可なく借り入れはできなかった。そんなとき、財布の奥に眠っていたネット銀行のカードのことを思い出す。

「通帳は印鑑と一緒に、夫に取り上げられていましたが、カードは持っていたんです。預金は全部引き出されていて、残高ゼロ。でも、1度も使ったことはなかったカードローンをつけたままにしてあったのを思い出して。」

マサエさんは、銀行カードローンで2万円を引き出し、タクシーと電車でその日のうちに隣県に脱出した。着の身着のままだったという。途中で、子供の紙おむつや食べるものを買ってしのいだ。

現在は、調停で子供の養育費とともに、勝手に引き出された預金の返還を求めている。

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